#02.試しにカミングアウトしてみた~高校時代の同級生編~

60歳の両親にゲイをカミングアウトした話

60歳の両親にゲイをカミングアウトした話をするにあたって、
僕が人生で初めて「僕はゲイだ」と人に話した、経験。
つまり、初めてのカミングアウトの話をしますね。

僕が19歳の時。
相手は高校時代の同級生、男子4人。

今でも昨日のことのように思い出されます。

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僕は積極的にカミングアウトしたいタイプじゃない

ゲイにもいろいろな性格の人や考え方の人がある。
中でも僕は、そんなにオープンじゃない方かもしれない。

今でこそ、多くの音楽仲間と楽しくライブをやったりイベントをやったりするけど、
もともと、みんなと仲良くやるタイプじゃないんだ。
小中学生時代は周りとなじめなかったし、
陰口を言われたり、指を差されて笑われたりしたこともあったからね。

っていっても、人間不信というほどじゃない。
人を見てお付き合いするようになった、ってことかな。
運もあるし、縁もあるし。

だから、積極的にカミングアウトしたいとは思わないかな。
伝えなくていいなら、伝えない。
「この人に僕のことを知ってほしいな」とか、
「この人と感情的にすれ違いたくないな」=「ちゃんと分かり合いたいな」とか、
そんな風に思ったら、言おうかな・・・と考え始めるくらい。

一方的なカミングアウトは相手に気を遣わせる

そもそもね、
「実は僕はゲイなんだ」って一方的にカミングアウトしても、
相手に気を遣わせると思うんだ。

世の中、人間の根っこから悪い人って、そんなに多くない。
みんな優しいよ。基本的にはね。

だからこそ、
僕がゲイだってことを伝えると、
相手は、僕を傷つけないようにいろいろ気を遣うようになっちゃう。

もしくは、
ゲイを相手に何か余計なことを言っちゃったらあとがめんどいとか、ね。
とくに昨今のLGBTは、権利の主張や差別をとにかく主張しまくって、
「なんだかとっつきにくそうだなぁ」
「下手なこと言って差別だとか言われたくないなぁ」
「面倒だから関わりたくないなぁ」
って思われちゃうのも、ね。

もちろんそういう主張も必要な面があるけど、
人と人だったらさ、もっと柔らかい物腰とかさ、言い方とかさ、あるじゃん。

メリットは「自分が楽になれる」

それでも僕がカミングアウトをするのは、
メリットがあるからだ。

それは「嘘をつかなくてもよくなる」ってこと。

僕らゲイは、日常生活の中で、絶えず周りに嘘をついて生きている。
でも、現状そうせざるを得ない。

「お前さ、今彼女とかいるの?」

テレビなんかボーッと見てたら、
何の前触れもなく、
こんな攻撃力の高い言葉が飛んでくる。突然。

「いない」と答えたら「作らないの?」と言われる。
「好きな人はいないの?」「最後に付き合ったのはいつ?」など、
さらに突っ込んだ質問が飛んでくる。

「付き合ったことがない」と答えたら、
「なぜ付き合わないの?」「女に興味ないの?」「もしかしてホモ?」と思われる。

「付き合ったことがある」と答えたら、
「どんな女の子だったの?」「なぜ別れたの?」など、
質問がさらに深くなっていく。

言った本人はもちろん悪気なんてない。
きっと、僕と他愛もない話をして、仲良くなろうと思っているだけなんだ。
でも悪気なんてないからこそ、
鋭利な刃物が真っすぐ飛んでくる。

そして僕は、
そこに1ミリもの不自然さを残してはいけない。
全力で頭をフル回転させて、ウソを作り上げて答えなくちゃいけない。
「女の子が好きなフリ」をしなくちゃいけないんだ。

そして、
バレたら一巻の終わり。

そんな恐怖と闘いながら、
相手の表情を見て、自分の話に矛盾が生じていないかビクビクする。
そして頭をフル回転させて、悪気のない相手と、自然な笑顔で戦う。
挙動不審になってもダメ。
気持ちが表情に出てもダメ。
聞かれたら、ためらわず、すぐ答えなきゃダメ。

僕の青春は、こんな毎日だった。

普段から24時間365日。
いつ、どこで、誰から、いきなり何が飛んでくるか分からない。
そこで1つでもミスすれば、身の破滅。失敗は許されない。

テレビを見てたら家族から「あんたバレンタインもらったの?」
体育の時間に友達から「女子と一緒に体育やりたいよなー」
家に帰ろうと廊下を歩いていたら後ろから友達が「おっ!これから女子とデート?」
久しぶりに会った同級生に「上野君、結婚は?」
家族で食事中、親から「同級生の○○君、結婚したんだって」
クラスメイトが教室で笑いを取ろうと「○○ってホモっぽくない?笑」
先生が「上野はさ、大人になったら何歳くらいで結婚したいとかあるのか?」
弟が「お兄ちゃん、昨日けっこう寝言言ってたね笑」

みんな悪気はない。僕がゲイだって知らないんだから。

カミングアウトをすれば、
これがなくなる。

「カミングアウトなんて自分が楽になりたいだけでしょ」

っていう言葉を聞くけど、その通りだ。

でも、そのどこが悪いんだろう。
本来、必要のない苦しみだ。
社会に生きている限り、ずーーーっと続く。
そこから解放されることがそんなに悪いの?って思っちゃう。

デメリットは書ききれない

自分がゲイだとカミングアウトしたら、どうなっちゃうんだろう。
想像しただけでも恐ろしい。

「上野ってホモなんだって」
「マジかよ、遊んでたら告られるんじゃね笑」
「この前カラオケ行ったとき友達がトイレに行っちゃって、
 上野と二人きりになってさー、マジ怖かった笑」
「上野って一生結婚できないんだよねー。かわいそう」

そんなうわさ話が広がりそう。
ようするに陰口だよね。

これはゲイとは関係ない話なんだけど、
中学生のころ、こんなことがあった。
クラスに必ず一人はいるお調子者。
彼が突然、黒板の隅っこに何か描き始めたんだ。

誰かの似顔絵だった。

いろいろな特徴をおおげさに、面白おかしく描いてた。
僕はそれが誰の似顔絵なのか分からなかった。
僕も、頭に疑問符が浮かびながら、ちょっと笑ってたくらいだ。

女子や陽キャ男子が
「お前もう、、、マジやめろよー笑」「これはヤバいね笑」「ってか本人気づくから!笑」
って言ってる。

誰のことなんだろうと思いながら、
僕はだんだん嫌な予感がしてきた。

(・・・え?・・・ぼ、ぼく?)

僕の顔から少しずつ笑みが消えはじめた頃、
騒ぎの中の数人が、僕の顔を見た。

「ほらー、もうやめなよー、はい!もうそこまで!笑」

このことは、とくにゲイとは関係ない。
でも、
みんな、僕の見えないところで、何を言っているのか分からない。
それがハッキリと分かった出来事だった。

人は、信用できない。
人が傷つくことより、自分たちが笑って幸せになることが優先なんだ。

そして、こいつらがそのまま大人になって、
社会を構成していくんだ。

クラスって社会の縮図だ。

そんな世の中で、僕がゲイだなんてバレたら、
どうなるかなんて、バカでも分かる。

いやでも、
味方になってくれる人や、分かろうとしてくれる人もいる。
それも知ってる。
でもそれは、今このクラスで見たらわかるくらい少数なんだ。

高校時代の友人

そんな中で中学を卒業して、高校に入学した。

高校に入学すると、みんなお互いに知らない者同士。
前の席の人が、中学時代にいじめられてたとしても、誰も分からない。
横の席の人が、中学時代にクラスで孤立していたとしても、誰も分からない。

でも友達を作らなきゃ、自分が孤立しちゃうから、
みんなお互いに優しくなる。
多少クセがある人がいても否定せず、みんな仲良く認め合ってた。

僕も、その一人だった。

つまり、その時の僕のクラスは、
いじめとか、人をバカにする笑い、
そういうものが、なかったんだよね。

これは偶然かもしれない。
たまたま僕のクラスがそういう空気感だっただけなのかも。

だけど僕はそんなクラスを見て、
「すごい・・・、こんな社会もあるんだ」
ってその時は思ったんだ。

細川、田島、守山、佐藤。 (全員仮名です)
彼らはそんな中でできた友達だった。
クラスが別々になっても、
部活が違っても、
一度くらい誘いを断っても、
またみんなで集まって、語り合って、同じ時を過ごした。
みんな優しい気持ちを持って、一緒に友達になろうとすれば、
多少みんなと違っていたって、独特なクセのあるやつだったって、
ホントに心から仲良くなれた。

中学校まで、周りを信用できなかった僕は、
ほんのちょっとだけ、
心の隅っこに、こう思うようになった。

「こいつらだったら、
 俺がゲイだとしても、付き合い続けてくれるんじゃないか」

その時はとつぜん訪れた

人生初のカミングアウトは、突然訪れた。

高校時代の同級生と、
夜のドライブ。
たぶん19歳だったと思う。

細川、田島、守山、佐藤。
そして僕、上野。

細川が運転して、田島が助手席にいたかな。
後部座席に、右から佐藤、守山、上野。

夜の道路は、車も少なくて、
オレンジ色の街灯の横を通り過ぎる一瞬だけ、
みんなの表情が見えるくらい。

くだらない話から、まじめな話まで、
僕たちはいくらでも話し続けることができた。
意見が違っても、みんなお互いに、好きだった。

この4人と、僕。
いつもの気楽な夜の語り合いドライブ。

その時、誰が言い出したのかすら忘れちゃったけど、
いつもの楽しいテンションで、こんな話になったんだ。

「秘密を言い合おうぜ」

恐怖

このメンバーといる時は、
気楽な自分でいることができたんだ。
僕は友達に対してこんな気持ちを抱くことが初めてだった。
お互いにだいたいどんな奴なのか分かり合ってるし、
踏み込んでいい場所、踏み込まずに守っておいてあげる場所、わかってた。
調和のとれた関係だよね。

だからといって気を遣いすぎず、
みんなそれがそれで、心地よい。
自然でいられる。

間違いなく僕もその一人だった。

ところがだ。

「秘密を言い合おうぜ」

この一言が、
僕に強烈な不意打ちを食らわせた。

僕の心は、強烈な緊張と共に、
一気に防御態勢へと傾いていく。

一方、車の仲は僕の気持ちとは裏腹に、
秘密を暴露しようとするスリルが、ひとりひとりから発せられて、
大きく渦巻いていった。

何を言おう、、、何を言おう、、、
みんなの前に差し出せる、何か自然な秘密はないか、、、
早く考えないと、僕の番が回ってきてしまう、、、

どうしよう、、、
・・・ダメだ。何も浮かんでこない。

ゲイは絶対に言えない、言えるもんか、言えないよ、絶対。

・・・。

僕の陰口を言っていた中学時代の奴らの顔が、チラチラ脳裏をよぎる。
僕の見えないところで、僕を笑っている奴らの、一瞬の笑顔だ。

こわい。こわい。こわい。こわい。

でも。

僕は、ふと周りを見た。

夜の高速。
車の中。
何千回と見た顔。

僕らは高校を卒業したのに、こうして会ってる。
別にわざわざ会う必要なんてないのに。

なのに、みんなお互いに誘い合って、一緒にいる。
僕の目の前にいるこの4人は、
今のところ、僕の最大の理解者
ハッキリ言って親より何でも言える。

むしろ、
言えないことは「僕はゲイだ」ってことだけだ。

細川は、田島への愚痴をよく僕に話す。
でもそれは陰口じゃなくて、あとで田島にちゃんと言うんだ。
田島もそれに対して、どうしてそうなったかの経緯を細川に言うんだ。
それは守山も佐藤も同じ。

時々ぶつかるけど、
それは「お互いに分かり合いたい」っていう気持ちの延長線上にあった。

ハッキリ言うと、
僕史上、最高のメンバーだ。

こいつらに、
「僕はゲイだ」
って言ったら、いったいどうなるんだろう。

分かってくれることって、あるんだろうか。

小さな願い

いやでも、
今夜を境に、遊びに誘われなくなるかもしれない。

「上野って、、、ホモだったのかよ、、、マジか」
「隣が上野でさ、車の中で寝たりしたら危ねぇんじゃねえの」
「ちょっと悪いけど、男が好きな男とは友達でいられないな」
「マジでないわ、、、」
「上野って、いいヤツだけどさ、・・・ね笑」

陰口を言うやつらじゃないのは分かってる。
でも、生理的に無理だって感じちゃうかもしれない・・・

でも別にね、言う必要があるかって考えたら、
わざわざ言う「必要」はないんだよ。
別のテキトーなエピソードを話せばそれでいいんだ。

でも、、、
友達がいなかった僕は、
心のどこかで、やっぱりこう信じ始めてた。

「僕のいちばん醜い部分を晒しても、友達でいてくれるんじゃないか」
※当時はゲイであることを醜いと思い込んでいた

背中を押した一言

この場を何もなくやり過ごすとしたら、
小学生の時にやったいたずらを告白しておこう。

言ってもいいんだ。
でも、
言わなくてもいいんだ。

薄暗い夜の高速の車中で、
一人ひとりの顔を見た。

細川、田島、守山、佐藤。

俺はこいつらと、どう在りたいんだろう。

細川が、こう言った。
「お前の好きなやつでいいよ」

どうやら僕の番らしい。

続けて田島が、
「うん。マジで言いにくかったらいいし」

守山が、
「そうだよぉ~笑 大丈夫だからさぁ~」

佐藤が、
「うん、そだね」

僕は、黙って、
下を向いた。

もう僕は疲れたんだ

今まで生きてきて、
気の休まることなんて、なかった。

ずっっっっっっっっっっっっっっっっっっっと、だ。

学校なんかで喋ったら、それこそ破滅だ。

家族にも言えなかった。
親に拒否されたら、僕は明日から帰る場所がない。
そしたら僕は静かに家を出てホームレスになろうと考えてた。
10代で本気でそう考えてた。

でも、

せめて。

世界で1つくらい、

ずっとじゃなくていいから、一瞬でいいからさぁ、、

安らげる空間があっても、いいじゃないかよ・・・

僕は、もう、疲れた。
疲れたんだ。

鼻の奥を、
熱いものがぎゅ~っと込み上げてきた。

沈黙。

細川「じゃあ次は上野ね」

・・・。

「これはホントにマジで、誰かに言うの初めてでさぁ笑
 たぶん誰も知らないと思うんだけど・・・」

これを言ったらもう後には退けない。
やっぱりいくしかないんだ。

自分で笑っているつもりなのに、どんな顔になってるのか分からない。
もうその瞬間には、ひきつってる。

心臓に細い針をゆっくり刺し込まれてるみたい。

もはや自分がなぜこんなことを言おうとしているのかすら、
分からなくなってきた。

少しだけ退いてみた。

「やっぱり別のに変えようかなぁ~笑」

すると田島が、

「うん、なんでもいいよ」

と言った。
さらっと、だ。
「無理しなくていいんだぜ」っていうメッセージのようだった。
薄暗い車中で、みんなも頷いている。

僕は、ゆっくりと、みんなの「優しさ」を感じた。
これでもかというくらい、感じた。

細川はね、
クールで冷たい目をしたヤツ笑。
なのに、周りをしっかり見て気配りができる。
しかもそれを感じさせない。
物事の効率と、人の気持ちを、同じ天秤で測れるヤツだ。
常にいろんなことを同時に考えてる。
学力どうこうじゃないよね。
本当に頭のいいヤツっていうのはこういうヤツのことなんだろうな。

守山はマイペース笑。
明るくて、声がデカい笑。
人を否定するクセに、自分が否定されると怒るんだ笑。
でも人が傷ついてるのを見ると、否定する手をスッと引く。
ちゃんと分かってじゃれてるんだよ。
守山の結婚式では俺がギター弾いて歌ったんだぞ。感謝しろよー笑。
今まで僕は、
同級生の結婚を耳にするたびに、
「僕は一生結婚できないんだ」
って思ってた。
だけど、お前の時は本当に違ったんだ。
仲間が幸せに向かって歩んでいくことが、
心からまっすぐ嬉しかった。

佐藤は、小うるさいコメンテーター笑。
論評が好きだよなー。
でも仲間への理解は人一倍深い。大切にするんだ。
人に対する論評だけじゃなく、
常に自分を顧みているところがすごい。
高校生の頃からそうだった。ずっとだ。
だからこそ仕事が変わっても自分の魅力を失うことなく成長していける。
ひょうひょうとした顔をしながら、
独特の感性の持ち主でユニークなアイディアが溢れてくる。
何度笑わされたことか笑。
彼に認められることは、何よりもの勇気に繋がった。

田島は、死んだんだ。
この時から10年も経たずにね。
彼は変わったヤツでさ笑。
確固たる自分らしさを持っているのに、人には何も押し付けない。
笑った顔と、困った顔が、おもしろかったなぁ笑。
一時期、田島の恋愛相談に乗ったことがあってね。
ヤツがあんまりにも情けないヤツだったんで笑、
俺がイライラして怒ったことがあったよな。ごめんな。
いろんなことがあったよな。
今も時々思う。
40歳になったお前は、一体どんな人生を歩んでいたんだろう、ってね。
あの広い公園でまたキャッチボールしたいな。

どんなに仲良くなっても、
どんなに信じあっていても、
どんなに僕を好きでいてくれても、
「僕はゲイだ」を言ったら、おしまいだ。

だけど今、
おしまいじゃない道が、少しだけ見え始めた。

その道に、心臓を引っ張られるようにして、
彼らを信じる気持ちと、彼らと決別する覚悟を、一緒に抱えながら、
ゆっくり、その言葉を、口にした。

「俺さ、・・・なんていうか、
 女の子に興味がないっていうか・・・
 その・・・、たぶん、、
 ど、同性愛者っていうか・・・、なんだ、・・・うん」

みんな静かになってる。
夜のドライブだから、みんなの顔はそこまでよく見えない。
高速道路のオレンジ色のライトが横を通り過ぎる時、
一瞬だけ顔が見える程度だ。

僕の言葉を最後に、窓を閉め切った車中が沈黙で浸される。

な、なにか、・・・言わなきゃ。

「・・・。」

言葉が見つからない・・・。何を言おう・・・。

あぁ・・・。
これでみんなと、
もう二度と会えなくなるんだ。
終わった。
俺が悪いんだ・・・

なんで言っちゃったんだろう

言ってしまった直後、
とてつもなく大きな後悔が訪れた。

なんで言っちゃったんだろう。

次のサービスエリアで車を降りて、
一人で帰ろう。
始発まではどこかで寝てよう。

その時、

「別に、上野がそういう人でも、今までと何も変わらなくね?」

細川だった。

細川は冷静だ。状況にも、人の気持ちにも、目が行き届く。

続けたのは田島だった。

「うん、そうだよ。別にそれを言ったからといってさ、
 さっきまでの上野と今の上野が違うわけじゃないじゃん」

佐藤が、

「うん。そうだね」

守山も、

「んーまぁ、あれだよ!お前はお前だからさぁ、大丈夫だよ!大丈夫!!」

僕は、
僕はね、
みんなに、
どんな顔をしたらいいのか分からなくなった。

きっと混乱した表情だったんだと思う。
細川がこう言ったんだ。

「でもさ、上野が何か言おうとしてた時、
 上野の顔を見たら、何かデカイことかなーって、
 ちょっと思ったけどね」

「え、どういうこと?」

「んー、結構、・・・思い詰めてたっていうか。
 お前があそこまで言うか言わないか悩んでたじゃん。
 だから結構大きいこと言うのかなって思った。震えてたし」

そこで気付いた。
僕は、ずっと震えてた。

体中が固く緊張して、指先も冷たくなってた。
手をこすり合わせてたくらいだ。自分で気付かなかった。

僕は、中学校で友達がいなかった。
それでも、高校でこんなに素敵な友達ができた。
それさえも壊してしまうかもしれない覚悟で伝えてたんだ。

今考えると、なんでこんな思いまでしてカミングアウトしたんだろうと思う。
若かったし、あんまり深く考えてなかったのかもしれない。
最初からカミングアウトするつもりだったわけじゃないし。
なかば「ノリ」で言っちゃったみたいなところもある。

とりあえず言えるのは、
話の流れ的に「自分の秘密を暴露する」というテーマだったこと。
そして「ゲイを告白しても友達でいてくれるのか」。
「友情を試した」っていうと聞こえは悪いけど、
カミングアウトしてもなお仲良くしてくれたら、
何かが「ホンモノ」なんだと、直感的に思ったんじゃないかな。

カミングアウトのあと

それでカミングアウトしてから、その後は実際どうだったのか。

その後も、
みんなでドライブ行っていろいろ語り合ったり、
温泉に行ったり、飲みに行ったり、登山にも行った。
ファミレスで朝まで語り合ったり、海を見ながらしゃべったり。
何か特別なことをしたという訳じゃないけど、
みんな本当に素敵なやつらです。

40歳を過ぎてからは、みんなそれぞれ忙しくて疎遠になっちゃってるけど、
そろそろ久しぶりに声をかけて集まりたいな。

そういえば以前、細川が北海道旅行のお土産をくれたことがあってね。
「ほら、お前の好きなソーセージ」
って言いながら極太の魚肉ソーセージをくれたこともあったね笑。

最高。

え?何が?
「ソーセージ」じゃなくて「友情」が最高なんだよ、
誤解しないでね笑。

学校や職場でのカミングアウトをしている当事者は27.6%

法務省のHPにも載っていますが、
27.6%のLGBT当事者が、学校や職場でカミングアウトをしているそうです。
だいたい4人に1人がカミングアウトをしている感じですね。
出典 日高庸晴 宝塚大学看護学部教授 「LGBT当事者の意識調査 ーいじめ・職場環境問題ー」

でも逆に言えば、4人中3人は学校や職場ではカミングアウトしていないっていうこと。
信頼のおける友人にカミングアウトするのは分かるけど、
「学校」や「職場」という「集団」や「社会」の中で、
「私はセクシャルマイノリティです」と公表するには、まだまだ壁があるようですね。

僕も、同じ気持ちです。

信頼のおける友人にはカミングアウトできそう。
だけど、いろんな価値観を持った人たちが、雑多に混ざり合う集団、
とくに「学校」とか「職場」では、
陰口や変なウワサが流れてしまいそうで、いやですね。

もちろん、
カミングアウトすることがすべてではないし、
カミングアウトすることが正しいみたいな風潮も、違うと思います。

だけど、
言おうとした人が、言おうと思った時、
スッと言えるコミュニティでありたいと思いますね。

これはLGBTに限った話じゃなくて、
何か悩みを相談しようと思ったり、思ったことを言ったりするシーンにおいてもですね。
何か困ったことがあれば、
相談するのもしないのも、自由。
自力で解決するのも、自由。

でも僕は、彼らのような友達ができてから、
相談することが圧倒的に増えたように思います。
最終的には自力で解決するしかなくても、
信頼できる人の考え方を聞いて、刺激されて、自分をアップロードさせて、解決したい。
その方が、一緒に力を合わせて解決した感じがして、僕は好きかな。

カミングアウトブーム

彼らへのカミングアウトがあってから、
僕の中で「カミングアウトブーム」がやってきた。
今考えると、なんて厄介なブームだったんだろう笑。
もう二度とやってほしくない。

それについては、また別の回でお話しますね。

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