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両親へのカミングアウト③~伝える瞬間~

●ゲイの人向け
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今日は実際に両親へカミングアウトをした当日のことを詳しくお話します。
この日のことは、僕にとっても大きな意味のある一日で、
もう10年近く前のことですが、今でもよく覚えています。

また、ここまでの流れは今までの記事で紹介していますので、
そちらをご覧ください。
両親へのカミングアウト①~理由~
両親へのカミングアウト②~準備~

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心がけたことは「今日から新しい親子関係をスタートさせる」

今までの記事を読んで下さった方はお分かりかと思いますが、
僕が両親にカミングアウトをするのは、
これから新しい親子関係を、一から築き直していくという目的のためです。
今まで「普通の息子」という考え方で僕と接していた両親は、
「普通じゃない」とまでは言いませんが、
想像していたのと違う将来に、ガラッと変わるわけです。

それはショックなことかもしれないけれど、
不幸なことではありません。
不幸というのは、不幸だと思うことが不幸を呼び集めてしまい、不幸に至ります。
幸せというのは、ほんのわずかな愛を見逃さないことです。

そのために、
まず今日わかってほしいことは、

僕が今、幸せだということ。
これからも幸せでいるつもりだということ。
親が悪いんじゃないということ。

この3点でした。

そして、今後少しずつ分かっていってほしいことは、

息子がゲイであるということがどういうことなのか。抽象的&具体的に。
僕は常に幸せだということ。
いい人に恵まれて生きているということ。

この3点です。

これは今も伝え続けています。

さて。
そんな前提を胸に、
僕はいよいよカミングアウト当日を迎えたわけです。

カミングアウト当日

前日に電話をして、ちゃんと会いに行って話をするということを伝えたうえで、
普通に実家へ行きました。
夕方ごろでした。

実家の玄関を開けて「ただいまー」と言うと、
台所の奥から母親の「おかえり」という声。
母親は、感情を落ち着かせようとして、変に無機質な「おかえり」になっていました。
こんなふうに感情優先で動いてしまうのが、ウチの母親の特徴です。
だからこそ、僕は努めて冷静に振舞わなければなりません。

茶の間(実家は畳の部屋なので「リビング」ではない)でテレビを見て、
父親が帰ってきました。

父「おー、正卯、来てたか」
僕「うん、来てたよー」

会話はこれだけ。

でも別に悪い空気じゃありません。
今日は僕から「話がある」っていうことだから、
父親もそれが気になりすぎて、何を話したらいいのか分からなくなっているようでした。

こうして、人の顔色を見て、
どういうことを考えているのか気にして生きてきましたからね、ずっと。
「あ!今の僕の発言でゲイだってバレなかったかな」
「僕のことをゲイだって疑ってるんじゃないかな」
って。
こうして気を張って生きていくのも疲れるけど、
だんだんこれが普通になっちゃいました。
でも今は別にバレても「そうでーす」って言うくらいの度胸はついた(笑)。ついちゃった?(笑)わからんけどw

話を元に戻します。

3人で、
ご飯を食べました。
無難な会話。
長続きしない会話。
父も母も、テレビを見てるけど、テレビの内容は頭に入ってないみたい。
CMを一生懸命見てるもん。

でもこれもすべて想定していたこと。
大丈夫すぎるくらい、大丈夫。

父と母と僕。3人の話し合い

ご飯を食べ終えて、
片づけをして、
茶の間のテーブルに座りました。

僕から切り出します。
緊張感は出さず、テンションはゼロな感じ。高くもなく低くもなく、フラットな声色です。

僕「じゃあ、例の話ってやつなんだけど・・・」
母「うん」

我が家には四角い木製のちゃぶ台があります。
父は僕の真正面に、母は僕の左側に座りました。
父は真っすぐ僕の目を見て、心配を押し殺して冷静に振舞っているのが伝わってきます。
母は僕の顔を見ず、ちゃぶ台の真ん中あたりに目を落としています。

僕「うん。じゃあ、話すね」
父(うなづく)
僕「実は、結婚のことなんだけど、俺ね、結婚するつもりがないんだ」
両(うなづく)

母親は僕が結婚する様子がないのを知ってか、それはすぐ頷きました。
そして視線をちゃぶ台に落としたまま、僕の次の言葉を待ちます。

僕「それでね、その理由なんだけど」
父「うん」
僕「あのね、俺さ、なんていうか・・・その、今までずっとそうだったんだけど」

いよいよ、いよいよだ。
この言葉を、口にするんだ。
僕を育てて来てくれた両親の前で。
きっと二人は、僕の将来をお先真っ暗だと思うだろう。
僕もそうだった。

でももう違う。
僕はゲイとして生きていくことに、覚悟を決めた。
楽しく幸せに生きる覚悟を決めたんだ。

僕「実は、・・・女性を好きになれなくて。」
両(うなづく)
僕「・・・。」
両「・・・。」
僕「うん、・・・実は、同性愛、・・者、・・・なんだ」
両「・・・。」

ふたりは黙ったままです。
その意味がどういうことなのか、よく分かっていないような顔をしました。
なんか「ドウセイアイシャ」って聞いただけのような、そんな顔でした。

僕「分かる?その・・・男しか好きになれないんだ」
父「・・・それは」

父が、息を大きく吸い込んで、ゆっくりと優しく確認するように言いました。

父「・・・お前がそうなのか?」
僕(ゆっくり大きくうなづく)

母は黙ってちゃぶ台に目を落としたままです。
僕からは、意味が通じているのかどうかわからないくらい、表情は変わっていませんでした。
だから僕は母にどんな風に思われているのかが全く分からず、
少し緊張が増してきました。
なんとか伝えようとして、早口で一気に説明をしてしまいます。

僕「だからね、俺が女性と結婚した場合、女性に嘘をついて結婚することになる。ね?
そこで俺ががんばってがんばって、反応しない自分の体に嘘ついて、なんとか子どもを作ったとしても、
その子を、・・・その、・・・幸せにできる自信が、俺自身にもないし、
今の社会にも、・・・ないんだ」
父「・・・なるほど、・・・そういうことか」

そうなんです。
カミングアウトというのは、2つの事実を知ってもらう作業があります。

一つ目は、僕が同性を好きになる人間だということ。
二つ目は、それが社会的にどういう人間として位置づけられるかということ。

僕が男を好きになることで、具体的に何がどうなるのか、
どんな問題が発生してくるのかというのは、
なってみた本人じゃないと、なかなか想像は難しいんです。

僕「だから、俺が結婚すると、俺のまわりの多くの人が幸せにならないんだ、自分も含めて。
結婚することが幸せなんじゃなくて、更に俺の場合、幸せになるために結婚するわけでもなくて、
結婚することで不幸になる人が増える。
俺は結婚するために生きてない。幸せになるために生きてる。
だから・・・、二人には本当に申し訳ない気持ちでいっぱい、って言葉じゃ足りない。
僕は、・・・結婚できないし、・・・しない。ごめんなさい。」

父親は少しずつどういうことになるのか分かってきた様子でした。
父親が心に描いていた我が息子の未来像が、
具体的にどうリアルになっていくのか、見えてきたみたいです。
でもそれはまだ頭で分かってきた段階で、
感情的には整理できていなかったと思います。
「とりあえず状況は分かった」という状況です。

一方は母というと、頭でも心でもついてきていないようでした。
この時に、僕の話が一通り終わったタイミングで、母は僕にこう言いました。

母「・・・、んんー、なんだかお母さんはよく分かんないけどさ、
(うなだれた様子を僕に見せないように姿勢を正して)
あんたが健康でいてくれたら、お母さんはそれで、いい」

僕は、心の中で「今日はここまでだな」と思いました。
とりあえず、息子がゲイであること。
そして結婚はないこと。
この二つは伝えて、分かってもらったつもりです。

でもこれは感情として理解できたとはいいがたいです。
その証拠に、予想通りの言葉が、母親の口から出てきました。

母「あんたそれ、治んないもんなのか・・・?」
僕「うん、だめだった。
俺も自分がそうだって気づいたのが小学生頃でね、
それからいろんな本を読んだり調べたりいろいろ試したの。
苦しんで苦しんで、自分はいつか女の子を好きになるんじゃないかーって、
自分に言い聞かせて言い聞かせて。
でも、・・・やっぱりダメだった。
お母さんが女性を好きになるのと同じくらい、可能性のないことなんだ。
お父さんが男性を好きになるのと同じくらい、それもそう。
そういう答えにたどり着いた時、
「俺ってこの世に生きててもしょうがないのかなー」って思った。
そんぐらい悩んだんだー。辛かったー(笑)。
親はもちろん、誰にも言えないんだもん。
自分の人生の大前提がひっくり返るんだもん。
ひとりでずーっと。悩んでた。」
父「・・・そうか。そういうことか。正卯はずっと辛かったんだな」

この一言が、父の口から出てきたとき、
僕は泣きそうになった。
父がゲイである僕の今までの悩み苦しみを、本当に理解したわけじゃないのは分かってる。
でも僕は思いました。
「この人の息子として生まれてきてよかった」って。

そして思いました。
絶対に幸せな人生にして見せるから見てろよー!!って(笑)。

本を渡すこととその目的

その日はそれで帰りました。
ただ、それから両親はきっと考えて考えて考えるんだと思います。
僕の言葉は「音」なので、
形に残りません。

そこで、石川大我さんの「ボクの彼氏はどこにいる?」という本を置いて帰りました。

あとでゆっくり落ち着いて何度も読み返せる

この「僕の彼氏はどこにいる?」という本は、
ゲイとして悩みぬいた石川大我さんの青春時代が書かれています。
僕もこの人と同じようなことで悩んでいました。
びっくりするくらい同じでね(笑)。
だからこの本を読んで、
実は僕がどんな人生を、この過程の中で毎日両親と顔を合わせながら、苦しんで生きてきたのかということを、
分かってもらうにはいいかなーと思ったんですね。

声で伝えたら、「音」は一瞬で消えますからね。
少し気持ちを落ち着かせてから、ゆっくりしっかりと僕の人生がどんなだったか、
自分のタイミングで読み進めてくれたら菜と思って、渡しました。

「ウチの息子だけの話じゃないんだ」とイメージを一般化させる

あと、親心といて、
「どうしてウチの子に限って」
という気持ちが生まれてくると思います。
でもゲイは世の中にたくさんいます。
その中でも、僕みたいに悩む人もいれば、あっけらかんと生きていくような強い人もいます。
どちらにしても「ウチの子だけのことじゃないんだ」って思うことで、
少しは気が楽になるかなと思ったんです。

実際僕も、いろんなゲイの方とお会いさせていただく中で、
僕だってゲイとして楽しく生きたっていいじゃん!って思えるようになっていきました。

僕が悩んだことを、追体験してもらう

息子がゲイです。
どんな苦しみや悩みを抱えて生きたのか。
僕が悩んだことを、親に追体験してもらいたかったんです。
「そんなの、親が辛くなるだけじゃん」
って思うかもしれませんが、
もし、僕がゲイじゃなくて普通に結婚して親として生きていたら、
子どもの苦しみを分かってあげたいって心から思っていたでしょう。
なんなら自分が身代わりになりたいって思うと思います。

親ってそういう生き物です。

僕は親になったことはないけれど、
学習塾業界で18年働いて、
親がどういう生き物なのかは、ある程度わかっているつもりです。

でも恋人もそうですよね。

恋人が抱えている悩みを「俺に言うんじゃない!」なんて思いません。
一緒に悩んで、一緒に知恵を出し合って、一緒に乗り越えていきたいと思うもん。
そして、そういうことができるのって、やっぱり家族なんだと思います。
もしくは将来家族になる人。つまり運命の相手ってことね。
そういう境地に至ったことはないけれど、
たぶん愛がそういう境地になるんだと思います。

とりあえず言うことは言った!

ということで、
この日、言うべきことは言いました!
そして、意味として伝わったと思います。
あとはこれからの関係をどうやって再構築していくか、です。

カミングアウトは、言うだけじゃありません。
カミングアウトは、今までよりも仲良くなることです。

僕は、親に大きなうそをついていたわけです。
その「足かせ」が取れて、本当に本音で話せる関係になれたらいいなと思います。

おまけ:親にも嘘をつかせる

ちょっと話がそれますが、
カミングアウトをしたとき、親にこう言いました。

「今後は僕の嘘に付き合ってもらうから、気を付けてね。頑張ってね」

例えば親せきと電話で話したり、冠婚葬祭で顔を合わせたりした時、
「正卯君って、いい人いないのー???」
って言われちゃいます。
その時、今までは僕だけが嘘をつけばよかったんですが、
これからは親も頑張って嘘をついてもらいます。

これで、少しは、
僕がどんなに気を張って生きてきたのかということが分かるはずです。
こうして、親が息子の現状を理解してくれればと思います。

だからこそ、
僕も親の気持ちを理解していかなくてはいけません。
息子がゲイだということをカミングアウトしてきた。
そんな親の気持ち、経験したことありませんから。

ですから、
お互いの歩み寄りなんです。

これって、
とても大切なことです。

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